Integrated Services Digital Network (ISDN) User-Network Interface


私が昔国際標準化に参加検討し、今や一般にも広く知られ使われているISDN: Integrated Services Digital Networkについて、おもに、ユーザ・網インタフェースプロトコルについて、既存の電話信号方式との対比も含め、その概略を述べたいと思います。



信号方式・プロトコルとは
 信号方式・通信プロトコルは、通信を秩序だてて行なう約束事で、通信規約とも呼ばれます。信号方式と(通信)プロトコルということばは、厳密に使い分けている訳ではありません。ただ信号方式(signaling system)から想起されるイメージは、あるエンドシステムから別のエンドシステムの間に回線(あるいはそれに準ずるもの)を設定し、維持し、開放する一連の制御をつかさどるプロトコルとなります。これは一般に、ネットワークの基本機能である、情報を伝えるパイプを提供する伝達レイヤに関する制御だと言えましょう。
 これに対してプロトコルは、以上に述べた信号方式はもちろん包含しさらにエンドシステム間での(一般に、ネットワークの基本機能としては、その中身をうかがい知れない)情報送受に関する規約も含んでいます。従ってプロトコルは伝達レイヤ+高機能レイヤの制御用の規約と言えます。
目次に戻る


電話機の信号方式
 今のダイヤル・パルス形電話機は、フックスイッチのオン・オフ、及び加入者網の極性反転で、発呼・応答・切断・終話を表します(監視信号)。番号に当たる選択信号は、直流ループの断続(DP:ダイヤルパルス)で送りますし、プッシュ回線ではPB信号で送ります。
 いずれにしても、信号は、インチャネル形式(制御信号が通話と同じチャネルを通る)で、その種類は少なく、転送速度も遅いものとなりますし、通話中に信号を送ると通話の妨げとなってしまいます。)最近の電話機は、見かけ上プッシュホンとなっていても、回線がDP用のものが多く、選択信号は、押しボタンの数字に応じて電話機がパルスにして送っているものが多いのです。
 DP形電話機において発呼するとき、ユーザが受話機を持ち上げると、交換機にある加入者回路(LR)が、それを検出し(交換機と電話機の間で2線の加入者線があり、その2線で、直流ループ回路ができる)、発信レジスタ(ORT)に加入者線をつなぎ込みます。ここでダイヤルトーン(DT)が出て、ダイヤル可能となります。DP式では、ダイヤル番号の数だけ直流ループが切れることになります。従って、ダイヤル指板を回す代わりに、フックスイッチを数字だけ叩けば、ダイヤルできたことになります。
 最後の一桁をフックスイッチでやるとただでかかると言うのは残念ながら迷信にすぎません。
 ダイヤルし終えると、ネットワーク内の回線が着側まで接続され、着加入者交換機は発呼者にはRBT(呼び出し中を知らせる音)を返し、同時に着呼者の電話機を鳴動させます。着加入者が、受話機を持ち上げると応答信号が返され、発加入者線の極性が反転します。この時、過渡電流が流れて、電話機のベルが一瞬鳴ることがあります。通話が終了すると、電話機がおろされ、ループが切断されて終わります。
 接続先が、警察・消防や、番号案内、故障受付など、金のかからない相手のときは、応答(これが課金開始のひきがねです)を返しません。従って、今は殆ど見かけませんが、赤電話の中には最初の料金収納パルスである応答が返らないと、加入者から局の方向の通話ができないしかけのものがあるため、「お店の人に言って下さい」との表示がある場合があります。
目次に戻る


ISDNはディジタル網+サービス総合
 ISDNは、日本語ではサービス総合ディジタル網となり、ディジタル網であってサービスが総合化されているものです。
 以下に、それぞれに分けて、特長を述べて、なぜISDNが必要なのかを考えていきます。
目次に戻る


なぜディジタル網なのか
 NTT網は昭和40年に、1.5Mb/sで24チャネルの音声情報をディジタル多重化して運ぶPCM24方式が商用化されて、そのディジタル化の第一歩をしるしました。その目的は設備の経済化と高品質サービスの提供にありました。
 まず、ディジタル化によって、網の経済化が実現できました。ディジタルパルスの再生中継の区間が短い同軸に代わって光ファイバが導入されることにより、経済化は飛躍的に進みました。  ディジタル化率が高まるにつれて、基本的に雑音に強く中継による音質の劣化の少ないディジタル網は、お客様にアナログに比べて圧倒的に良い品質を提供できるようになりました。
目次に戻る


なぜサービス総合なのか
 電話網、DDX-P網、テレックス網など、サービス個別の網では、お客様に個別に契約いただく必要があり、また、料金、番号、加入者線から中継網までの設備を全て個別に用意することになり、大変不便を強いていました。これがサービス総合により一本化が図れ、いろんなメディアを自由に駆使できるようになるのです。
 また、網コストの半分を占めるにもかかわらずその使用率が極めて低い(平均すると1日に数分!しか使われない加入者線は1本ずつお客様のおうちまでひかれているのです)加入者系をいろんなサービスで共用でき、経済性も向上が期待できます。

目次に戻る


なぜISDNなのか
ディジタルの良さとサービス総合の良さを組み合わせたISDNは、
・使いやすさ
・経済性
・品質
の飛躍的な向上が期待できることになります。
目次に戻る


ISDNのねらい
1)利用者の利便性の大幅な向上
 ・個別の契約・番号・設備の統合
 ・通信メディアを自由に駆使
2)ネットワークの高度化
 ・経済性: 加入者系の共用化(利用率の向上)
      LSI技術や光ファイバ伝送技術等革新技術の適用
 ・効率性: モデム(10kbps) --->144kbps
      加入者線信号方式の統一(共通チャネル信号)
3)通信用機器製造業者の市場拡大
 ・世界統一インタフェースによる世界共通市場
 ・通信業者によるマルチベンダ政策
目次に戻る


ISDNユーザ・網インタフェース(Iインタフェース)の特徴
 I インタフェースには、3つの大きな特徴があります。 
 一つめは、いろんな種類の端末で共用する汎用インタフェースですから、これから何の通信をするのかを、宣言する必要があります。通信相手もいろんな端末が1つの加入者線についていますから、宣言された通信の種別を判断して応答することになります。
 二つめは、1つの加入者線に複数の端末を接続し、どんな通信要求にもコンセントを差し替えることなく対応できるようにします。また、一度に2つ以上の通信が同じ加入者線上でできるようにします。
 三つめは、どんな種類の端末でもインタフェース規定を守っていれば、買ってきてそのままコンセントに差し込めば使えるようにします。
目次に戻る


Iインタフェースの参照点

 Iインタフェースの参照点(物理的な接続インタフェースを設定し得る点)には、T, S, Rの三種類があります。
 Tは、Iインタフェースプロトコルが直接適用される点で、ISDN 端末を直接収容します。
またSは、いわゆるPBXなどの内線におけるISDN インタフェースで、T点に収容される端末もそのまま収容できるものです。
 Rは既存端末(例えばX.25パケット端末など)を収容するインタフェースで、アダプタ(TA)によって標準Iインタフェース(T)に変換されて網に接続されます。現在お使いいただいているIインタフェースは、ほとんどすべて、TAを設置した形でR点にパソコンやモデムや黒電話をつなげる形ですね。
目次に戻る


Iインタフェースの種類
(1)基本インタフェース
 2B+D  B:情報チャネル(64kb/s)
      D:信号チャネル(16kb/s)
 Bは今の電話信号の帯域である4kHzをディジタル化したときの64kb/sに対応しますので、一度に2つの電話相当の通信が同時に可能となります。特徴的なのは、Dチャネルの存在です。これは、お客様の情報をやりとりするBと独立したものとなっていて、その上で接続関連の信号をやりとりします。こうすると、高速の信号のやりとりが通信に全く影響を与えずに可能となります。この意味でアウトチャネル型信号方式と呼ばれます。また2つのBチャネルで共通にDチャネルを使用しますので、共通チャネル型信号方式とも呼ばれています。
 しかも、ディジタル多重技術により、今お使いのアナログの加入者線をそのままISDN加入者線として使用できるのです(せいぜいモデムで数十kb/sしか通らない電話線に、144kb/sもの情報を流すことができるのです。
(2)一次群インタフェース
 23B+D (多重アクセス) B:情報チャネル(64kb/s)
             D:信号チャネル(64kb/s)
3H0+D(中速アクセス) H0:情報チャネル(384kb/s)
             D:信号チャネル(64kb/s)
 H1/D(高速アクセス) H1:情報チャネル(1536kb/s)
  D:信号チャネル(64kb/s)
            Dは、別インタフェース上
目次に戻る


レイヤ1の基本技術
 1つの信号チャネル(Dチャネル)を複数の端末で共同で使うためには、競合制御が不可欠です。それをIインタフェースではレイヤ1で実現しています。また、NTに近い端末と遠い端末の距離の差によるパルスの微妙なズレを解消する受動バス上の伝送技術、使い易く配線し易くするためにインタフェース線数を4線にしたこと、モジュラージャックで抜き差しを容易にしたこと、商用電源停電時にも最低1台の電話機の動作に必要な電力を局側から供給することなどさまざま技術が新しく開発されています。
目次に戻る


レイヤ2の基本技術
 レイヤ2は、レイヤ3以上の情報を端末と網の間で確実に、忠実に、効率良く届ける基本的役割を持っています。Iインタフェースレイヤ2は、この基本役割はもちろん果たしますが、加えてIインタフェース特有の特徴を持っています。
 一つは、呼制御用信号とデータパケットの両方を送れることです。
 二つめは、パッシブバスのユーザ・網インタフェースに複数の端末がつながって、それらの同時通信を実現し、かつ、それらに一度に情報を届けることです。3つめは、端末を自由に持ち運んでも、情報転送上支障無くすることです。
 これらの3つの特徴は、多重LAP、放送形式転送、自動TEI割当の3機能により実現されています。 
目次に戻る


レイヤ3の基本技術
 レイヤ3は、エンド・エンドの通信路を設定し、維持し、解放するのが基本機能です。Iインタフェースレイヤ3は、大きく分けて3つの特徴があります。
 一つめは、汎用インタフェースです。回線交換でもパケット交換でも、電話でもファクスでも汎用に使えるプロトコルになっています。速度やメディアなどの属性を指定して、属性が合うかどうかを呼設定の度に行ないます。
 二つめは、交換網を介しても、専用線を介しても同じように、つながるようにしたことです。例えば発端末から網への接続要求メッセージと網から着端末への接続メッセージを全く同じフォーマットにしています。
 3つめは、レイヤ2の放送形式転送サービスを用いて、着信側の不特定多数の端末に一斉着信して、属性の合った端末だけを選ぶ方法をとっています。
目次に戻る


おしまいに
 これらをもっと知りたい人はこの本を読んで見て下さい。
目次に戻る